こんにちは。後期の授業は皆さんどうでしょうか?
突然ですが、スクールロイヤー制度をご存知ですか?今回は、今広まりつつある新しい学校の形についての記事になります。
教員とは本来、学校をはじめとする教育施設で、在籍者に対して教育・保育をつかさどる職のことをいう。しかし最近は、それ以外のスキルも重要視されている。学校内のいじめを初めとした生徒間のトラブルや不登校、さらにモンスターペアレンツと教員、など教員の負担は測りしえない。その対策として考えられたのが、スクールロイヤー制度である。
スクールロイヤーとは
スクールロイヤーとは各都道府県・市町村の教育委員会,国立・私立学校の設置者において、学校で 発生する様々な問題について、子どもの最善の利益を念頭に置きつつ、教育や福祉等の視点を取り入れながら、法的観点から継続的に学校に助言を行う弁護士=スクールロイヤーを活用する制度のことである。(1)スクールロイヤーは学校に常駐しているわけではなく、必要な時に教員の間で話し合われ、最終的に校長が決定をし、スクールロイヤーに連絡をとる。そして、スクールロイヤーは法に基づいて学校側にアドバイスをするといった流れだ。
実際にスクールロイヤー制度を利用している学校もある。取手市立中学校で女子生徒がいじめにより自殺した問題で、市はスクールロイヤー制度を取り入れた。(2)また、静岡県藤枝市にても同様にスクールロイヤー制度を導入された。藤枝市では、法的な観点で助言を必要とする学校事案が2020年度は11月1日までに20件あったという。内容としては「教員の指導へのクレーム」「保護者からの不当な要求」「虐待」「いじめ」「コロナ対応」「ハラスメント」などであった。これに対し、小中学校を対象にした県の相談会は月2回しか行うことが出来無いといった課題があった。そこでスクールロイヤー制度を活用することになったのである。これに対し、危険回避や問題対処のやり方に法律家から助言をもらえると、教員が安心して仕事ができるという意見がある。
課題は
しかし、いくつか課題も残されている。まずは地方には教育に精通した弁護士がいない場合があるという問題である。このような点でも、地方と都会にて格差が出来てしまうことが懸念されている。
次に、財政的な問題もある。仙台市ではいじめを防止するためにスクールロイヤー制度を利用することが決定されたが、予算編成においてスクールロイヤーによる学校支援に166万円をかけると発表した。これに対し財政学を専門とする東北文化学園大学の貝山道博教授は「すぐに破綻する危機的状況ではないが、自転車操業に近い」と指摘している。(4)
また、最終的に連絡をとるのは学校側である。所謂モンスターペアレンツなどの問題では活用されやすいだろうが、生徒と教師の間でセクハラなど問題があった際に、教師に罪があることが明らかである場合、学校側はスクールロイヤーに連絡をとらない、といった選択をとることも考えられる。そもそも連絡をとる裁量が学校側に委ねられており、さらにスクールロイヤーは学校にだけアドバイスをし、生徒や保護者は接触出来ないという点において学校と生徒の間において公平性が保たれているとは言えない。また、学校側にとって不利益なアドバイスをされた時に、あくまでアドバイスである故に無視することも出来てしまう。これはいわゆる減点制度を取り続ける限りこういったケースは起こりうると考えられる。教員個人や学校全体の評価が下がるという点でスクールロイヤーを活用しないということは十分にありえると思われる。
問題点はありつつも、現時点では有効として利用され、広まりつつあるスクールロイヤー制度。しかし法制度において「スクールロイヤー」の 定義はなく、その定義や業務の範囲等については、 公的な統一的な見解はいまだに存在しない。(5)スクールロイヤー制度をこれからさらに広めて行くためには、どこまでスクールロイヤーが関わって良いのかなど、細部まで決定していくことが急がれている。
筆・総務部長 城田(法2)
(1)日本弁護士連合会「「スクールロイヤー」の整備を求める意見書(作成日: 2018年(平成30年)1月18日 閲覧日 : 2021年7月9日)
(2)朝日新聞 朝刊 21ページ「取手、いじめ再発防止を推進 専門職員配置 新年度予算案に4800万円 /茨城県」 (発行日:2020年2月19日 )
(3)朝日新聞 朝刊 19ページ「学校トラブル、弁護士が助言 藤枝市、来年度に制度導入 /静岡県」(発行日2021年2月5日 )
(4)朝日新聞 朝刊 21ページ「いじめ防止に手厚く 一般会計2年ぶり減5390億円 仙台市新年度予算案 /宮城県」(発行日2018年2月2日)
(5)こどもの権利ニュース 第12月号 編集責任:日弁連子どもの権利委員会「スクールロイヤー制度の実現に向けて」
(作成日 : 2020年4月1日 閲覧日: 2021年7月10日)
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